口を大きく開けたりするときに顎の関節や顎を動かす部分の筋肉が痛んだり、十分に大きく口を開けられないといった症状がある方や、口の開けたり閉じたりするときに顎の関節の部分がカックンといった音がする方は顎関節症になっている場合があります。顎に何らかの違和感があったり、痛みや音などのハッキリとした症状を持つ人は人口の7~8割いると言われており、その中で病院で治療を受けている人は1割ほどしかいないのが現状です。
その理由として、顎関節の痛みがない場合は普段の生活に若干の支障はあるものの、多少の症状は特別な治療をしなくてもやがて自然に治まることも多いため、病院に行くまでの必要はないと考えている方が多いことが理由の一つです。病院を受診する方の多くは、顎関節の痛みを訴える方が一番多く、中には関節周辺や頬、こめかみの痛みがある場合もあります。また、顎関節の症状を抱えている患者さんは女性の方が多く、男性の2~4倍いらっしゃいます。さらに若い女性と中年の女性に多いのも特徴の一つです。
顎関節症の主な症状
痛みを感じる
口を開けたときに顎関節やその周辺に異常を感じたり痛みを感じる。食べ物を噛む時にも同様に、顎関節や顎の周辺の筋肉に異常を感じたり痛みを感じるため、食事を楽しめなくなってしまいます。
口が開かない
口が大きく開けにくくなったり、口の開閉をスムーズに行うことができなくなります。通常、顎に以上がなければ自分の指の人差し指から薬指まで3本を縦にして口に入るのですが、その時の開口量が約40mmと言われ、最大開口量が40mm以下の場合には顎関節や咀嚼筋に何らかの異常があると考えられます。また、口が左右にうまく動かなかったり、大きく開けると顎が外れることがあります。
音が鳴る
口を開けたり閉じたりする時や、咀嚼時にカックンというような関節音がします。最も多い関節音は関節内にある関節円板という下顎頭と上顎の間にあるクッションが前方にずれることで起きる場合で、口の開け閉めに伴って下顎頭が関節円板に引っかかってしまい、その引っかかりが外れてさらに前へ出るときや、元に戻るときにカックンといった単発音が生じます。その他の関節雑音として下顎頭や関節円板が変形してしまい、下顎頭と直接的、間接的に擦れてしまうことによりシャリシャリ、グニュといった軋轢音がすることもあります。
顎関節症の主な原因
昔は顎関節症の主な原因として、かみ合わせの悪さが考えられていました。今でもかみ合わせが悪いと顎関節症を初めとして、全身にも色々な不都合が起こると言われていますが、顎関節症は噛み合わせ以外にも関節や筋に負担のかかる様々な要因が原因となっている場合があるのです。さらに場合によっては、小さな要因が重なることで顎関節症になってしまうこともあるのです。
顎関節症の原因となる要因は色々あり、もともと顎関節や顎の筋肉の構造が弱いといったことが要因であったり、精神的に緊張することや不安になることが多かったりすることなどの精神的な要因や、打撲や転倒、交通事故などによる外傷なども要因の一つです。さらに日々の生活習慣においても要因はあります。頬杖をつく癖があったり、うつ伏せで読書をする習慣や、食事の時に片側での噛んで食べる癖、睡眠時の歯ぎしりや噛み締め、スポーツなどでの歯を強く噛みしめることや、声を使った仕事なども顎関節症の原因の一つだと言われています。
顎関節症の治療法
顎関節症の治療法としては、噛み合わせを治すことが一番重要です。しかし噛み合わせを治すために歯を削ったり被せ物をしたり、歯列矯正をしたりするといった治療は、もしも治療を受けても症状の改善が見られなかった場合、元の状態に戻すことができないためよく医師と相談して治療に当たらなくてはなりません。第一選択の治療法として、スプリント(マウスピース)を上顎あるいは下顎の歯列に使用して、上下の噛み合わせのバランスをとるようにします。そうすることで顎の関節頭が正しい位置に戻り、筋肉の緊張がとれ、顎をスムーズに動かすことができるようになります。重症の患者さんは、場合によっては手術による治療をおこなうこともあります。
顎関節症のセルフケアと生活習慣の改善
顎関節症の痛みや口が開けづらいといった症状の改善には、患者さん自身による毎日のセルフケアが重要です。セルフケアを積極的に行うことが顎関節症の改善に繋がるということは世界的にも提唱されています。硬いものを食べる習慣や同じ姿勢を長く続けていたり、頬杖をする癖など、ご自身で無意識におこなっている行動や、姿勢、習慣等が症状を起こしやすくしたり、一旦始まった症状を長引かせているケースがあるのです。そのため、セルフケアによる十分な自己管理をおこない、生活習慣の改善をすることで顎関節症の予防にも繋がりますし、治った後の再発もなくなるのです。