インプラント治療は、歯茎を切開して顎の骨にインプラント体を埋入する外科手術を伴います。そのため、手術中・手術後の痛みや腫れに不安を感じている方も多いかと思います。また、顎の骨の量が足りない場合は、骨造成や骨移植などの骨を増やす手術が必要になってしまい、さらに身体的負担が大きくなってしまいます。インプラント手術における痛みや腫れの期間、痛みの強さについてご説明いたします。
インプラント手術の痛みや腫れについて
通常のインプラント手術の場合
インプラント手術をおこなう際には、局所麻酔を用いるため、手術中は痛みを感じることはありません。しかし、歯茎を切開して顎の骨にインプラント体を埋入するので、麻酔が切れた後には痛みや腫れを生じることがあります。個人差や症例によって異なりますが、通常のインプラント手術の場合は、それほど強い痛みを感じることもなく、痛みがあっても手術後に処方される痛み止めや炎症止めなどを服用することで、痛みは治まることが多いです。痛みの期間も個人差がありますが、早い場合では術後2~3日ほどで、長くても1~2週間ほどで治まります。腫れの場合は、痛みとは異なり術後2~3日後のピークから徐々に治まっていき、術後1~2週間で腫れは元通りになることが多いです。 もしも、痛み止めなどを服用しても痛みが治らない場合は、我慢せずに歯科医院に連絡して適切な対処をしてもらいましょう。さらに、1~2週間が経っても痛みや腫れが長引く場合は、インプラント体を埋入した箇所が細菌感染している可能性もあるため、歯科医院に相談してください。
骨移植する場合
インプラント体を埋込するための顎の骨量が少ない場合に、骨移植の手術をおこなうことがあります。骨移植とは、自家骨(自分の骨)を移植する場合と、人工骨などの骨補填材を移植する場合の2種類があり、骨移植する場合はインプラント体を埋込する場所と違う場所を切開する必要があるので痛みの箇所が増えてしまいます。さらに、インプラント治療をおこなった箇所よりも、自家骨を取った箇所の方が痛みが強い傾向があります。
骨造成手術をおこなう場合
サイナスリフト、ソケットリフト、GBR法などの骨造成手術は、インプラント治療に必要な顎の骨の厚みを補うためにおこないますが、術後の痛みは通常のインプラント手術よりも強く、腫れることも多いです。
歯茎を移植する場合
インプラント体を埋込するための歯茎が少ない場合は、歯茎の移植手術が必要になることがあります。この場合、骨移植と同じく痛みの箇所が別に増えてしまい、さらに歯茎を取った箇所の方が痛む傾向があります。
インプラント手術後の注意点
インプラント手術後1~2時間は麻酔が効いているため、誤って唇や粘膜を噛んでしまう場合があるので、食事は控えましょう。麻酔が切れた後の食事も、おかゆや麺類などの柔らかいものを食べるようにしてください。また、術後は痛みや腫れを伴うことが多いため、痛みや腫れを増幅させる飲酒は術後2~3日控えるようにして、お風呂も術後は控えてシャワー程度にしてください。さらに、激しい運動も痛みや腫れを増幅させるため、1週間程度は避けてください。
手術後の感染症リスクについて
インプラント治療において、最も注意が必要なことの一つとして、インプラント体を埋入した部分が細菌感染してしまうことが挙げられます。医院も様々な設備や機器を投資して、衛生管理の徹底をおこない感染のリスクを軽減させていますが、インプラントは天然の歯に比べると歯根膜がないので、粘膜との結合が弱いということから感染症にかかりやすい傾向にあります。中でもインプラントの歯周病であるインプラント周囲炎は、細菌の塊である歯垢(プラーク)によって歯茎が細菌感染してしまい炎症を起こす病気で、初期の自覚症状がほとんどなく、進行が早いため、進行が進んでしまうとインプラント体を骨との初期固定を得ることができず、インプラントが脱落してしまう危険性もあるのです。そのため、インプラント体を埋入後に、インプラント周囲の粘膜の腫れや、出血、インプラント体と歯茎の隙間(歯周ポケット)が深くなったといった症状が見られた場合は、すぐに歯科医院に相談しましょう。
静脈内鎮静法とは
インプラント手術をおこなう際には、局所麻酔を用いるので痛みはありませんが、意識はハッキリしているため、患者さんの中には手術に対する強い緊張や不安によってパニックを起こしてしまい、血圧の急上昇や過呼吸、呼吸困難などを引き起こす場合もあります。その際は、静脈内鎮静法をおこなうことで手術の伴う過度な緊張や不安を取り除くことができます。静脈内鎮静法とは、点滴をしながら静脈より安定剤を投与する方法で、全身麻酔とは違い意識はありますが、ほぼ眠っている状態でリラックスして治療を受けられるため、緊張や不安によるショック状態を予防することができます。静脈内鎮静法をおこなう際は、専門の麻酔医がモニタリング下にて、心電図、血圧、心拍数、血中酸素飽和濃度などの確認をしながら、全身の状態の管理をおこないます。