急な事故や怪我、虫歯や歯周病などによって歯を失ってしまった場合、「インプラント」「ブリッジ」「入れ歯」などの治療法があります。もしも歯の失った本数が少ない場合、治療方法を部分入れ歯かインプラントで迷う方もいらっしゃいます。この場合、保険適用で治療も比較的早く終わる部分入れ歯による治療を受けている方も多いのですが、近年では部分入れ歯からインプラントにする方も増えています。部分入れ歯からインプラントにすることにより得られるメリットをご説明いたします。
メリット
しっかりと噛むことができる
一般的な保険適用の部分入れ歯は、失った歯の隣の健康な歯に「クラスプ」と呼ばれる金属製のバネを引っ掛けて固定し、歯を失った部分に人工歯をのせた義歯床を装着することで歯の機能や見た目を回復させます。ただし、クラスプで入れ歯を固定していることから、天然歯に比べて噛む力は3割〜4割程度しかないため、強い力がかかり過ぎてしまうと粘膜が圧迫されて痛んだり傷ついてしまう場合があります。また装置と粘膜の間に食べ物が入ってしまうことで、噛みづらくなることも考えられます。しかしインプラントの場合、チタン製のインプラント体を顎の骨に埋入することで、インプラント体が骨としっかりと結合する「オッセオインテグレーション」の性質を利用することにより、インプラント体が人工歯根となるため、天然の歯のようにしっかりと噛むことができます。何でも噛むことができることは、食事を楽しむことにも繋がります。
高い審美性を得ることができる
部分入れ歯は金属製のクラスプを歯に引っ掛けて固定するので、装着部位によっては金属部分が目立ってしまいます。また保険適用で使用できる素材も限られているため、天然歯と比べると審美性がどうしても劣ってしまい、入れ歯をしていることが周囲に知られてしまう場合もあります。その点、インプラントは顎の骨に埋入したインプラント体に人工歯を装着するので、目立つような装置を付ける必要がありません。さらに、人工歯は患者さん一人ひとりオーダーメイドで作製するため、患者さんの健康な歯の色や形に合わせた人工歯を作ることができます。これらのことから、インプラントは高い審美性を得ることができるのです。
口腔内の違和感がない
部分入れ歯は装着時の違和感を感じることが多く、慣れるまでは「話しづらい」、「擦れて痛みを生じる」、「誤って舌や頬などを噛んでしまう」などの問題が生じてしまう場合があります。また、経年劣化により入れ歯が合わなくなり、ぐらついてしまう場合もあります。しかし、インプラントは顎の骨とインプラント体がしっかりと結合しているので、人工歯を装着した際の違和感がなく、経年劣化もすることもありません。
顎の骨の吸収を防ぐ
部分入れ歯は粘膜に人工歯のついた義歯床をのせていることから、噛んだ時の刺激が歯茎に伝わりません。そのため、徐々に顎の骨が痩せていく「骨吸収」を起こしてしまいます。しかしインプラントは、人工歯根であるインプラント体を顎の骨に埋入することで噛んだ時の刺激が直接歯茎に伝わるため、顎の骨の吸収を防ぐことができます。さらに、噛む刺激が脳に伝わり、脳が活性化するので認知症の予防にも効果が期待できます。
部分入れ歯からインプラントにする際の注意点
インプラント治療は顎の骨にインプラント体を埋入する外科手術を伴います。そのため、部分入れ歯からインプラントにする場合は注意が必要なのです。 インプラントは基本的に保険適用外治療(自由診療)となることから、入れ歯治療に比べて費用が高額になってしまいます。また、長期にわたり部分入れ歯を使用している方の場合、顎の骨が痩せてしまっているケースも少なくありません。その場合は骨量を増やす「骨造成」が必要になり、身体的・経済的負担が大きくなってしまいます。
さらに、糖尿病や心疾患、高血圧や骨粗鬆症などの全身疾患がある方はインプラント治療ができない場合がありますので、まずはかかりつけの主治医に相談してインプラント治療が可能かどうか確認をした後、歯科医師にご自身の健康状態を詳しく伝えることが重要です。
その他にも、インプラント治療後も定期的に歯科医院でメンテナンスを受けることが必要になります。メンテナンスを怠ると、インプラントの歯周病である「インプラント周囲炎」のリスクが高くなってしまいます。そのため、ご自身もしくはご家族の方の協力のもとで、定期的に歯科医院に通院することができる場合でなければ治療を受けることはできません。
まとめ
部分入れ歯からインプラントにすることで、多くのメリットを得ることができます。また生活の質(QOL)の向上にも繋がるという観点からも、インプラント治療はお勧めだといえます。ただし、治療の際には注意すべき点もありますので、治療をお考えの方は事前に歯科医院に相談して頂くことをお勧めいたします。