インプラント治療によって歯の機能や見た目を回復させた後は、年に3回程度の頻度で歯科医院でのメンテナンスを受けることが必要になります。メンテナンスでは口腔内やインプラントの状態の確認や、X線撮影によってインプラント体の確認、噛み合わせの調整などをおこない、インプラントをそのまま問題なく使用できるかどうかの判断をおこないます。
また歯のクリーニングをおこない、ご自身では除去することができない歯茎の中の歯石や、細菌の集合体であるバイオフィルムなどの汚れを専門的な機器を使用して除去します。しかしながら、歯科医院でのメンテナンスを受けているからといって、インプラントを含む口腔内が完全に衛生的な状態を保ち続けていけるとは限らないのです。 インプラントは天然歯よりも歯垢(プラーク)などの細菌が増殖しやすく、少しでもご自身のブラッシングを怠ったりするだけで、口腔内の衛生状態が悪化してしまう可能性も考えられるのです。そのため、インプラント体とネジで接合されている上部構造のアバットメントを取り外し、細かく洗浄をおこなう「オーバーホール」が重要となるのです。
インプラントのオーバーホールとは?
インプラントのオーバーホールは、インプラントの上部構造を一旦インプラント体から取り外し、接合部分をキレイにしてから再度装着し直す清掃方法です。上部構造を装着した状態でおこなう歯のクリーニングとは違い、上部構造を取り外し接合部分の清掃をおこなうことで、微細な雑菌や細菌などもしっかりと除去することができるのです。
インプラントは「インプラント体」「アバットメント」「人工歯」にパーツ分けされるのですが、インプラント体とアバットメントのネジで接合されている部分は、インプラントの中でも雑菌が付着しやすい箇所なのです。そのため、口腔内が不衛生な状態でインプラントを使用し続けることにより、接合部分に雑菌や細菌が繁殖してしまい、インプラントの歯周病である「インプラント周囲炎」に罹患するリスクが高くなります。一度インプラント周囲炎に罹患してしまうと、ご自身で気付きにくいだけでなく、天然歯の歯周病よりも進行が早いので、歯槽骨にまで炎症が広がり骨を溶かし始めます。歯槽骨が溶かされ続けてしまうと、インプラント体を一度除去して治療しなければならなくなる恐れもあるのです。インプラントは人工歯なので、天然歯よりも細菌が繁殖しやすく歯周病に罹患しやすいといわれていることから、歯周病を未然に防ぐためにも定期的なメンテナンスとともにオーバーホールが非常に重要なのです。ただし、インプラント体にはインプラント体とアバットメントが一体化した「1ピースタイプ」があり、この場合オーバーホールはおこなうことができないのでアバットメント部分に何らかのトラブルが起こった場合は、インプラント体ごと撤去しなければいけない可能性もあるため注意が必要です。
オーバーホールの頻度や費用
オーバーホールは歯科医院で定期的におこなうことが大切なのですが、頻度としては一般的に数年に1度おこなうことが良いとされいます。ただし、口腔内の状態やご自身でのブラッシングの技術、歯科医院によってオーバーホールをおこなう頻度は異なりますので、詳しくは歯科医院に確認するようにしましょう。
頻度に違いはありますが、オーバーホールは通常の歯科医院でのメンテナンスでは除去することができない微細な汚れを取り除く作業であるため、最低でも5年に1度程度おこなうことが良いといわれています。いくら定期的にメンテナンスを受けていたとしても、オーバーホールをしていないことでインプラントの状態が悪化してしまう場合もあるのです。 オーバーホールは基本的に保険適用外治療(自由診療)になるので、費用は地域や歯科医院によって異なりますが、一般的な費用は1回につき3000円~10000円程度必要になります。オーバーホールの内容によって費用は多少変わりますので、インプラント治療前にオーバーホールについても歯科医院に確認することをお勧めいたします。
まとめ
インプラント治療によって機能的・審美的に優れた人工歯を手に入れることができれば、一生快適に使用できると思っている方もいらっしゃいます。しかし、各インプラントメーカーが保証する寿命を設定していることからも、適切なケアを怠るとインプラントの寿命は短くなってしまいます。そのためご自身でのセルフケアを正しくおこない、歯科医院での定期的なメンテナンスを適切に受けるとともに、適切な頻度でオーバーホールをおこなうことがインプラントを長く快適に使用することに繋がるのです。実際、インプラント治療を受けた患者さんの9割以上が10年以上快適に使い続けているという調査報告もありますが、適切なケアを正しくおこなうことによって、インプラントは半永久的に使用することも可能なのです。