インプラント治療は、外科治療が必要となる治療法です。そのため、手術には局所麻酔や静脈内鎮静法によって、痛みを感じることはほとんどありませんが、麻酔が切れた後では多少痛みを伴うことがあるため、痛み止めや抗生物質などのお薬を処方します。
インプラント治療を受ける際に特に気を付けていただきたのは、全身疾患などの持病を持っており、普段から薬を服用している場合です。お薬には相互作用があり、時としてアレルギー症状や、ショック症状、治癒不全を引き起こすため、注意が必要となります。そのためにも、手術前にかかりつけの主治医と手術ができるのかを相談し、歯科医師にも持病のことを必ず伝える必要があります。
インプラント治療の前に
以下の全身疾患をお持ちの方は治療前に必ず当院の医師にお知らせください。
- 糖尿病の方(基本的には治療ができませんが、インスリン注射などで血糖コントロールができる方は主治医と当院の医師と相談することで治療ができる場合があります。)
- 高血圧の方(抗凝固薬のアスピリンなどの血が止まりにくくなるお薬を服用されている場合があるため)
- 心臓病の方(ペースメーカーの手術をされた方や、 抗凝固剤を処方されている場合があるため)
- 腎臓、肝臓に疾患がある方(腎透析を受けられている方や、臓器機能の低下によりお薬の消化や排泄に時間がかかるので、投与量に気をつける必要があるため
- アレルギーのある方(インプラント手術にはチタンなどの金属を使用するため)
- 妊娠中、または授乳中の方(妊娠中の方は、レントゲン撮影が必要になるので胎児への影響が心配されるため。また、つわりがある方は、長時間口を開けたまま歯科治療を受けることは体に負担がかかってしまうため。授乳中の方は、お薬の中には胎児にとって良くないものもあり、薬剤の母乳汚染のリスクもあるため)
- アスピリン喘息の方(アスピリンをはじめとする解熱鎮痛薬『非ステロイド性抗炎症薬』を服用したときに、非常に強いぜん息症状を引き起こすため) ・その他、過去に薬を服用してかゆみや、発疹、下痢、嘔吐、喘息など症状が出たことがある方
インプラントと骨粗しょう症の薬について
骨粗しょう症とは、骨量が減少してしまったり骨質の劣化が起こってしまい、骨折しやすい状態の事をいいます。骨粗しょう症の予防薬、あるいは治療薬としてビスフォスフォネート製剤(BP製剤)を服用している患者さんは、抜歯やインプラントの外科手術をした際、顎の骨が露出したり壊死したりする顎骨壊死(がっこつえし)の恐れがあります。
そのため骨粗しょう症の患者さんは、インプラント治療前に、骨粗しょう症の予防薬やビスホスフォネート製剤を服用し始める前であれば、先に外科的処置をしておくことが必要です。もしも服用中であれば、期間によって変わりますが、服用中止が可能な場合、かかりつけの主治医、当院の医師と患者さんとで相談して服用を中止した後、外科的処置を行います。骨粗しょう症の薬といっても、ビスフォスフォネートだけではありませんので、まずは当院の医師にお薬手帳やお薬の詳細をお知らせください。
手術後の薬の処方
抗生物質
手術後、麻酔が切れた後では多少痛みを伴うことがあるため、痛み止めや抗生物質などのお薬を処方します。抗生物質には、細菌による感染を防ぐ作用があります。手術後にインプラントを埋めた部分から、細菌が入ってしまい歯茎が化膿する場合もあります。その際、抗生物質を服用することで、細菌からの感染を防ぎます。 一般的に手術後に処方する抗生物質は、サワシリンなどのペニシリン系抗生物質製剤、トミロンやケフレックスなどのセフェム系抗生物質製剤、クラリスロマイシンなどのマクロライド系抗生物質製剤が処方されることが多いです。
痛み止め
インプラントの本数が多い場合や、顎の骨が薄かったり、不足している場合は骨造成手術が必要となるため、その場合は歯茎を切開する範囲が広くなるので、手術後に痛みと腫れが出やすくなります。また、インプラント手術を行って1週間~10日程度で、手術で縫った部分の糸を抜くことになり、軽い痛みを伴う場合があります。その際、痛み止めを服用することで、痛みや腫れを抑えることができます。また、痛みによる熱を下げる作用もあります。 一般的に手術後に処方する痛み止めは、カロナールなどの解熱鎮痛剤、ロキソニン、ボルタレンなどの抗炎症剤があります。
適切な薬の処方をするために
インプラント手術のあとに処方される薬は、患者さんの症状や体調によって処方される種類や量が変わります。また薬によってはアレルギー反応が出たり、副作用が起きてしまう危険性もあります。全身疾患をお持ちの方や、お薬のアレルギーのある方は、必ず事前に当院の医師に相談してください。