虫歯や歯周病などの治療の場合は保険が適用されるため、一部の負担で治療をおこなうことができます。しかし、急な事故や怪我、虫歯や歯周病によって歯を失ってしまった場合、歯の機能や見た目を回復させるための治療法であるインプラント治療は、基本的に保険適用外治療(自由診療)となるため、費用は全額自己負担になってしまいます。さらに自由診療なので、医院や地域によって費用が異なります。インプラント治療は、費用が高額になってしまいますが、高額になってしまうのには理由があるのです。また、症例によっては保険適用可能なインプラント治療もあります。
インプラントが高額になる理由
医師の専門的な知識や高度な技術
インプラントは、人工歯根であるインプラント体を顎の骨に埋入する外科手術を伴います。埋入したインプラント体と顎の骨が強固に結合することで、天然の歯とほとんど変わらない噛み心地を得ることが可能になります。しかし、インプラント治療は医師の専門的な知識や、高度な技術が重要となる治療であり、現在も日々研究がおこなわれているため、医師は常に新しい技術や知識を学ぶために学会や勉強会などに積極的に参加しています。そのため費用が高額になってしまいます。
高度な設備・機器の導入や徹底した衛生管理
より安全で正確な治療を患者さんに提供するために、歯科用CTスキャンや、コンピューターガイドシステム、マイクロスコープなどの高度な設備や機器の投資をおこなっています。また、インプラント治療をより安全におこなうためには、衛生管理の徹底をおこない治療中の感染を防ぐことが重要です。そのため、専用の手術室の完備や、専用の機器により患者さんの口腔内で使用するものは全て滅菌・消毒をおこないます。他にも、エプロンや口をゆすぐコップ、歯科医師や歯科衛生士が使用するグローブなどの使い捨てが可能なものは、患者さんのごとにすべて使い捨てにすることで、徹底した衛生管理をおこなっています。そのため、費用は高額になってしまいます
信頼できるインプラントメーカーのものを使用している
現在、世界中には数百社のインプラントメーカーがあり、その中でも豊富な実績や歴史のあるインプラントメーカーのインプラントは、長期に渡り安全に機能させるために日々研究・改良がなされています。さらに、上部構造も機能性や審美性の高い素材は費用が高額になってしまうため、治療費も高額になるのです。
保険適用されるインプラント治療の条件
通常、インプラント治療は保険適用外治療になりますが、場合によっては保険適用での治療が可能になります。インプラント治療で保険適用されるのは、以下のケースです。
・先天的に顎の骨の1/3以上が連続して欠損している場合
・上顎の1/3以上が連続して欠損している、または医師により鼻腔や副鼻腔へ繋がっていると診断された場合
・下顎の1/3以上が連続して欠損している、または腫瘍や顎骨骨髄炎などの疾患により切除が望ましい場合。
さらに、加えて以下の条件が整った施設でのみ、インプラント治療が保険適用されます。
・病院(入院用のベッドが20床以上ある施設)にある歯科または歯科口腔外科であり、歯科または口腔外科で5年以上の経験がある、または3年以上のインプラント治療の経験がある常勤医師が2名以上配置されていること
・当直体制が整備されている
・国が定めている医療機器や医薬品の安全確保のための体制が整備されている
インプラント治療は医療費控除の対象になるのか
医療費控除とは、ご自身や生計をともにする家族が、その年の1年間(1月1日〜12月31日)に支払った医療費が10万円を超えた場合(年収が200万円未満の方は、所得の5%以上を支払った場合)に、申請することで医療費の一部が還付される制度です。(控除される金額の上限は200万円) 対象となる医療費は、治療費以外にも医院で処方された薬代や、通院の際に利用した交通機関の費用も含まれます。その際、サプリメントや、マイカーで通院する際のガソリン代や駐車料金は含まれないため注意が必要です。歯を失った場合に、歯の機能を回復するインプラント治療は、医療費控除の対象になるため、申請することで経済的な負担を軽減することができるため、必ず申請するようにしましょう。
しかし、すべてのインプラント治療が対象になるというわけではありません。患者さんの中には「見た目をキレイにしたい」などといった「審美目的」でインプラント治療をおこなう方もいらっしゃいます。医療費控除の対象になるインプラント治療は、歯を失ったことで日常生活に支障をきたしてしまうため、治療が必要であると歯科医師が判断した場合に限られます。そのため、歯の機能の回復を目的とした治療でない場合は、医療費控除の対象になりませんので注意しましょう。