糖尿病とは
糖尿病とは、膵臓から出るホルモンで血糖を一定の範囲に留めておく働きをするインスリンが十分に機能しないために、血液中を流れるブドウ糖(血糖)が増えてしまう病気のことをいいます。しかし自覚症状があまりないために、糖尿病になっていることに気づいていない方も多くいらっしゃいます。
糖尿病は、かなり血糖値が高くならないと症状が見られないのです。高血糖の主な症状は、喉の渇きを頻繁感じる、尿の回数が増える、疲れを感じやすくなるなどの症状があります。さらに、血糖値が何年間も高い状態で放置されることにより、血管が傷ついてしまい、心臓病や失明、腎不全や足の切断といった、より重度な病気に繋がる危険性もあります。この糖尿病という病気は、インプラント治療にも大きく関係しているのです。その関係性をご説明いたします。
糖尿病とインプラントの関係
現在インプラント治療は、成功率が9割以上という高い成功率の治療方といわれています。しかし治療を受けた誰もが成功するとは限りません。インプラント治療が失敗してしまう原因の一つに、糖尿病があるのです。 その理由として、糖尿病は細菌の侵入に対しての抵抗力を弱くするため、インプラント手術をおこなった際、切開した部位から細菌感染してしまい、結果インプラントの失敗に繋がったり、治癒力が低下してしまうために傷の治りがやや遅くなってしまうため、そこから細菌感染を起こしたりするからなのです。
この対策として、抗生物質の適切な服用を手術前からおこなうなどの細菌感染への対策を十分にしておくことで、インプラント手術の際の細菌感染を防ぐことができるため治療も可能なのですが、重度の糖尿病の方は骨とインプラント体が結合しにくいため、インプラント治療ができない可能性もあります。 また、糖尿病の方は血糖値を下げる薬を服用していたり、ご自身でインスリンの注射をしている場合があります。その際、血糖値のコントロールを適切におこなわれていることがインプラント治療開始の条件となります。
歯周病が糖尿病と関係する?
口腔内の病気であり、歯茎の炎症である歯周病は、悪化してしまうと歯と歯茎の間の歯周ポケットから出血や膿が見られます。症状がさらに進行すると、歯茎の血管を経由して歯周病菌などの細菌が体中に放出されていきます。これらの菌は、体の中で血糖値を下げる働きをするインスリンを効きにくくします。そのため糖尿病を発症させてしまったり、糖尿病の進行を早めてしまうのです。こうしたことから歯周病は糖尿病と関係しているといえるのです。 糖尿病の方は、歯周病になるリスクがそうでない方に比べ2倍以上高いという報告があります。さらに血糖コントロールが悪いと、歯周病がより重症化しやすくなってしまいます。
歯周病を治療するためには、まずは患者さんご自身の毎日の正しい歯磨きなどの、セルフケアが重要になります。さらに歯科医院で炎症の原因となっている歯垢や歯石を取り除くことが必要です。その際、スケーリングやPMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)をおこなうことで、歯垢や歯石をキレイに取り除くことができます。さらに歯科医院での定期的メンテナンスによって、歯周病の治療後も歯茎を健康に保つことで、インスリンの抵抗性が改善できるので、それと同時に血糖コントロールも改善されていきます。
インプラント治療の際に注意する点
インプラント治療のような外科処置をおこなう場合は、HbA1c(ヘモグロビンに結合するブドウ糖の量の値)が手術に適した数値であることが必要です。また、低血糖による発作(眠気や気怠さ、動悸や冷汗、痙攣などがあり、放置すると昏睡状態になる危険性もある)を防ぐためにも、空腹時のインプラント治療はやめましょう。手術時は出血しやすいので、場合に応じて止血薬の投与や注射をおこないます。また、局所麻酔薬に含まれるエピネフリンは高血糖を引き起こす可能性があるため、エピネフリンを含まない局所麻酔薬を使用します。インプラント治療後は傷の治りが悪くなるため、細菌感染のリスクが高くなります。抗菌薬を長期間投与したとしても、傷の治りの悪さによって起こる細菌感染は予防できないため、治療前にしっかりと糖尿病を良好な状態にコントロールをしておくことが重要なのです。
糖尿病などの持病をお持ちの患者さんは、インプラント治療をおこなう際は、必ずかかりつけの主治医と相談した上で、当院での治療をおこなうことをお勧めいたします。