金属アレルギーとは
身の回りに付けるネックレスや指輪などの装飾品によって、金属アレルギーを起こす方は多くいらっしゃいます。金属アレルギーとは、金属から溶け出した金属イオンが体内のタンパク質と結合することによって、体内で新たなタンパク質に変性します。その新たなタンパク質を、体が異物として排除しようとする働きによって、拒否反応としてアレルギー反応が生じることをいいます。
口腔内でも、銀歯などの金属の被せ物によって金属アレルギーは起こります。被せ物が古くなり劣化してしまったり、唾液により金属が溶け出してしまうことで、唾液中のタンパク質と結合することにより新たなタンパク質ができてしまい、それを体の抗体が異物として過剰に反応してしまうことによって、様々なアレルギー反応を引き起こしてしまうのです。
歯科用金属による金属アレルギー
歯科用金属による、金属アレルギーの症状として見られるの症状の一つが扁平苔癬です。症状として、口の中の金属アレルギーの原因となる歯の周囲や頬の粘膜に白色の線条ができ、さらにその周辺が炎症を起こしたように赤く腫れてしまいます。歯磨き中に痛みを感じたり、食事中に違和感があるなどの自覚症状はありますが、個人差が大きいのが特徴です。 別の症状としては、手足の屈側面に隆起した小さな丘疹が見られることがあります。丘疹は、かゆみが強いのが特徴です。
金属アレルギーとインプラント
一般的な歯科医院での虫歯治療の詰め物や被せ物には、保険が適用される銀歯と呼ばれる合金が使用されます。しかしその銀歯が、金属アレルギーの原因となってしまう場合があるのです。 一般的に、インプラント治療では2種類の歯科治療用金属を使用します。1つは歯根の役割を果たすインプラント体で、もう1つは人工歯とインプラント体を連結するアバットメントです。インプラント治療の歴史は古く、これまでに様々な金属が使用されてきましたが、どの金属も生体親和性に優れずに、アレルギー反応が起きてしまうため実用的ではありませんでした。しかし、1952年にスウェーデンのブローネマルク博士によって実験中にチタンと骨が強固に結合をすることを発見されました。チタンは生体親和性に優れた素材であり、さらに時間をかけて強く骨と結合する性質があるため、顎の骨にインプラント体を埋込しても炎症反応が起こらないのです。
それだけでなく、骨と一体化するので入れ歯やブリッジなどと違って、天然の歯に近い状態を実現することができるのです。 現在でも多くの医療機関でチタンが使用されています。インプラントにおいても、インプラント体とアバットメントの2つの歯科治療用金属には、医療用の純チタンが多く使用されています。さらに、人工歯(被せ物)をセラミックやジルコニアなどの非金属の補綴物を使用すること(メタルフリー治療)で、金属アレルギーを防いでいます。それにより、審美的にも優れた美しい歯を取り戻すこともできるのです。このように、金属アレルギーがあるからといって、インプラント治療が出来ないという訳ではありません。現在のインプラント治療で使用する金属はほとんどがチタンなので、金属アレルギーの方でも多くのケースで治療を受けることができます。
治療前にはパッチテストをおこなう
チタンの生体親和性は非常に高いのですが、患者さんによってはチタンに対してもアレルギー反応を起こす方もいるのです。チタンでも、アレルギーの危険性は全くないというわけではないのです。そのため、インプラントの手術をおこなう前に金属アレルギーのパッチテストの検査を受けて、アレルギー反応がないかをチェックすることを推奨しています。方法としては、試薬のついたテープを目立たない背中に2日間貼り、剥がして皮膚にあらわれる反応をみます。その後は3日後、7日後と皮膚の反応を確認していきます。一定期間が過ぎれば、どの金属にアレルギー反応があるのかが分かります。そのほかにも、血液検査によってアレルギー反応を調べる方法もあります。 これまでにネックレスなどの装飾品の金属で、アレルギー反応と思えるような症状が見られたことがある方は、治療前に必ずパッチテストなどのアレルギー反応を調べるテストをおこなうようにしましょう。
レジンアレルギー
レジン(プラスチック)は歯科医療で多く使用されています。しかし金属アレルギーの他に、レジンアレルギーの方もいるのです。その場合、原因となっているレジンを取り除き、ジルコニアやセラミックなどのレジン以外の材料で治療しなおすことになります。その場合、美しさなどの審美的な面ではレジンよりも天然の歯のような仕上がりになりますが、保健適応外となるため費用が高くなってしまいます。