即時負荷インプラント
インプラント治療は、顎の骨にインプラント体を埋入して、インプラント体と骨がしっかりと結合する(骨結合)のために約3~4ヶ月の治癒期間を必要とし、その後アバットメントを装着してから人工歯を製作して取り付けるのが通常の治療の流れとなります。しかし、いくつかの条件を満たすことができれば、手術したその日に仮歯までを取り付けることが可能です。
この1日でできるインプラント治療法を「即時負荷インプラント」といいます。即時負荷インプラントによって、早期に審美性が回復し、食事も固い物でなければ噛んで食べることができるため、インプラント治療中の日常生活への影響が少なくて済みます。
即時負荷インプラントをおこなうための条件
- 即時負荷インプラントは初期固定が重要なため、良好な初期固定が得られるためにインプラント手術時の埋入トルク値が35N/cm以上であること。(埋入トルク値とは、インプラント体を骨に埋入した時に使用したドリルのエンジン、もしくはトルクレンチで測定した埋入の力の値)
- 十分な強度、精度のある仮歯が装着され、インプラント体との適合もよく、咬合力のコントロールができていること。
- 即時負荷に適したインプラントメーカーとインプラント体を使用すること。
- あまり軟らかい骨では初期固定が不十分なため、骨質が良いこと。(治療法やインプラント体によっては軟らかい骨でも対応できる場合があります)
- 歯ぎしりや食いしばりなどの、インプラント体に過大な負荷がかかる癖のない方。
- 共振周波数分析などで定期的に固定度のチェックをおこない、数値が急変したり規定値以下になった場合には、即時負荷を中止することができること。
- 埋入したインプラント体の表面に接触している骨は、徐々に吸収をはじめます。その際に、インプラントの安定度がもっとも下がる、2週目〜4週目くらいの期間の微少動揺を50~150μm以下の範囲に留めることができること。
- 高度な技術と豊富な経験のある医師がおこなうこと。
即時負荷インプラントの治療
まずは問診をおこない、治療計画を立て、歯科用CTやX線での検査をおこなって得た画像データを基に、インプラント分析ソフト(当院ではノーベルガイドを使用)によって、インプラント体を埋入する部位の骨の幅や高さ、質が即時負荷に対応できるかどうか、また適切なインプラント体の埋入位置や方向、本数などを綿密なシミュレーション(当院ではNobel Clinicianを使用)によって判断します。
即時負荷インプラントをおこなうための条件を満たしている上で、手術をおこないます。手術では、治療計画通りに顎の骨にインプラント体を埋入し、アバットメント、人工歯(多くの場合は仮歯)まで取り付けます。1ヶ月~3ヶ月ほどの治癒期間を経て、最終的な人工歯を作製し取り付けます。
ノーベルガイド
全ての歯を失ってしまった方や、総入れ歯の方の即時負荷インプラントの治療法として、「オールオン4」があります。オールオン4は、4本のインプラント体を埋入することで、上下それぞれ12本の人工歯を支えるというインプラント治療法です。このオールオン4は、インプラント体の埋入位置がもっとも重要であるため、現在では多くの症例でノーベルガイドを基に作製した「ガイデッドサージェリー」を使用してインプラント体の埋入をおこなっています。それによって、短時間で正確なインプラント体の埋入手術が可能となるため、患者さんの身体的負担を最小限に抑えることが可能です。また、インプラント手術シミュレーションソフト「Nobel Clinician」によるインプラントシミュレーションも、ノーベルガイドに反映されているため、安全に手術をおこなうことができます。
即時荷重インプラントのメリット
- 手術後すぐに仮歯が入るため、当日から噛むことができる
- 営業職や接客業などの人前にでることが多いため、仕事上歯がないと困る方や、審美上必要な方は大きなメリットです
- 1度の手術で仮歯まで取り付けるので、手術が1回で済むため、身体的負担を軽減することができる
即時荷重インプラントのデメリット
- 初期固定が得られる前からインプラント体に負荷をかけるため、インプラント体が動いてしまい抜けてしまう場合がある
- 仮歯が壊れてしまうことがある
- 初期固定が得られる手術後3~4週間までは、食事制限と注意が必要になる
NobelSpeedy(ノーベルスピーディー)
NobelSpeedyとは、ブローネマルクインプラントに改良を加えたインプラント体で、インプラント体が骨を圧縮しながら埋入するため、手術時間の短縮と同時に強固な初期固定を得ることができます。そのため、骨質の軟らかい部位でも即時負荷が可能になります。
当院では、NobelSpeedyを導入しております。さらに困難な症例に対しては「NobelActiveインプラント」の導入によって対応が可能です。NobelSpeedy、NobelActiveインプラント導入後、これまでよりも即時負荷の適応症例が格段に増加し、また高度なレベルでのインプラント治療の提供が可能となりました。