歯科技工士とは
歯科技工士とは、歯科医師が削ったり抜いたりした際に、歯科医師の指示に従い歯に詰め物や被せ物、入れ歯などの補綴物を製作する、国家資格を有した歯科医療における技術専門職です。歯の形や色などは患者さん一人一人異なるため、繊細な審美感覚と高度な精密技工技術を必要とします。歯は私たちの生活においてもとても重要な役割を担っています。食べ物を咀嚼したり、飲みこんだりすることはもちろん、話すときの発音や体の姿勢、体を動かす際に力を加えることなども、歯の噛み合わせなどによって大きく変わってきます。そして審美的な面でも歯は大きく関係しています。
欠けてしまったり失ってしまった歯を、歯科技工士の技術によって自然の歯のような美しさや、噛み合わせの良い歯として取り戻すことで、日々の生活の質が向上することからも、歯科医療において歯科技工士の技術はとても重要なのです。
インプラントにおける歯科技工士の役割
歯科技工士は、患者さんの口腔内を直接治療することができないため、歯科医師の指示を受けてから、人工の歯を作製するといった、口腔外での治療の役割を担っています。インプラントにおける歯科技工士の役割は、歯科医師が患者さんとのカウンセリングや診察・検査などの後に、外科的手術によって失った歯の部分にインプラント体を埋め込みます。それから歯型を取り、その歯型をもとに歯科技工士が人工歯の作製をします。歯科医師は作製した人工歯を患者さんの口腔内に装着し、噛み合わせなどの確認をします。噛み合わせの調整が必要な場合は、歯科技工士に修正の指示をします。このように歯科技工士は、歯科医師の指示のもと、患者さんの歯に合うように微調整しながら人工歯を作製します。
さらにインプラント治療はオールオン4や抜歯即時埋入法など、治療の過程においても様々なため、近年では、歯科技工士は治療の検査の段階から歯科医師と意見を共有しながら協力して治療を進めることも多くなっています。 また、歯科技工士は普段は患者さんの前に直接顔を出す機会が少ないため、患者さんのことを一番知っている歯科衛生士に、作成した人工歯の情報を確実に伝えることも重要な役割のひとつです。
歯科技工士の作製するもの
インプラント治療における歯科技工士が作製するものは、失った歯を取り戻すための人工歯(被せ物)の作製です。使用する材料としては、金属やプラスチックやセラミック、ジルコニアなどがあります。口の中は非常に繊細なため、安心で安全なものを使用することが重要であると共に、作製に高度な技術を必要とします。 またインプラント以外にも、歯並びや顎の位置がずれている場合に適切な位置にするための矯正装置や、歯を失った際に歯の機能を取り戻す入れ歯やブリッジなども作製しています。
さらに、就寝時の歯ぎしりや噛み締めを予防するためのマウスピースや、スポーツをする際に口腔内の怪我の防止のために装着するマウスガードなど、口の中に関係する多くのものを作製しています。 また、生まれつき顔や体の一部が無かったり、病気や事故で失われた顔や体の一部を、人工の材料を使って形態などを補うエピテーゼの作製もおこなっています。
エピテーゼの中でも義肢装具士は保険適用されますが、保険適用されないエピテーゼは、使用する材料や作製過程などが歯科技工作業と共通しているものが多いため作製は歯科技工士がおこなっています。 さらに、近年では高度な精密技工技術はもちろん、審美的な感覚も多く求められています。しかし一方では歯科技工士を志願する方が減少しており、歯科技工士を養成する学校などの機関も減っています。高度な精密技工術においては、従来手作業によって作製していた口腔内に装着される修復物や補綴物の作成工程の一部をコンピュータ制御の機器に置き換える一連のシステムである、歯科用CAD/CAMシステムによって、作業の効率化が可能となり、さらに同じ品質を作製することが可能となり、今まで使用することができなかった材料の利用が可能になりました。
当院では、歯型をレーザースキャンしCAD/CAMシステムによって予知性の高い上部構造と審美的に優れた人工歯を作製することができるノーベルプロセラを導入しております。
歯科技工士と歯科医師の関係
歯科医師からの指示によって歯科技工士は患者さんに合った人工歯を作製します。しかし、その過程においては患者さんにとって最善のものを作製するためにも、歯科医師と対等に意見することができる知識と技術、経験を兼ね備えた歯科技工士の存在が必要となります。これにより人工歯の完成度の質が上がるのはもちろん、患者さんの審美的なご希望にも的確に応えることが可能になるのです。