インプラント治療は、外科的措置を必要とする治療法です。さらに保険適応外のために費用が高額になってしまいます。そのため安全で安心した治療を受けることが重要になります。タバコはインプラント治療のトラブルの原因になるだけではなく、インプラント治療が失敗する危険性を高くするのです。もし治療が成功したとしても、治療後もタバコを吸い続けることでインプラントの寿命を縮めることにも繋がります。インプラントの歯は虫歯にはなりませんが、ニコチンや一酸化炭素によって、歯や歯周ポケットに歯垢がたまりやすくなり、歯茎の奥にまで細菌が進行してしまった場合、インプラントの歯周病ともいわれる「インプラント周囲炎」になる可能性が高くなるのです。インプラントは痛みなどの症状が出にくいため、インプラント周囲炎になっていても気づくのが遅くなってしまうことが多く、さらに進行がとても早いということも大きな問題です。
またインプラント手術では、歯茎を切開して顎の骨にインプラント体を埋入するため、インプラント体と顎の骨がしっかりと結合するため、通常の手術の場合は3ヶ月〜6ヶ月の治癒期間を必要とします。しかしニコチンにより歯茎の毛細血管が収縮してしまい、血液中の酸素と栄養の運搬が妨げられてしまうため、治癒が通常よりも遅れてしまいます。さらにインプラントの骨が結合する力を弱めてしまうため、インプラント体と顎の骨の固定が安定せず、最悪の場合インプラントが脱落してしまう危険性があります。そのため少なくとも手術前2週間は禁煙することが必要となります。手術や長い治療期間、そして高額の費用といった身体的負担や経済的負担をかけて、やっと普段の生活を取り戻したのに、治療が終わった後もタバコを吸い続けることによって、インプラントの歯の寿命を短くすることに繋がってしまいます。そういったことを考えると、少しでもインプラントを長く使用するためにも、また今後の体のことも考えて、インプラント治療をいい機会に禁煙することをお勧めいたします。
加熱式タバコや電子タバコについて
近年、IQOS(アイコス)などの加熱式タバコや電子タバコなどの次世代タバコが従来の紙巻きタバコよりも人体に対する害が少ないと言われていることから、急速に普及しています。しかしIQOSなどの加熱式タバコは基本タバコの葉を使用しているため、ニコチンや微量なタールも含んでいるのです。ですので加熱式タバコも口腔内に悪影響を及ぼしてしまうのです。
しかし、一方では身体にとって有害物質であるタールですが、抗炎症作用や抗ウイルス作用を持つ成分でもあるため、風邪などの予防や治療の作用があるのである。近年、紙巻きタバコからIQOSなどの加熱式タバコに変えている方も多くなっているのですが、それと同時に歯茎が痛くなったなどの口腔内のトラブルを抱える方も増えています。これは、紙巻きタバコでの禁煙をすることで、タールの抗炎症作用が歯周病により引き起こされる歯茎の痛みや腫れなどの歯周病特有の症状が、知らないうちに抑えられてしまっていたのが加熱式タバコに変えたことによってタールの量が減ったために炎症作用が弱くなり、本来の歯周病の痛みを感じるようになったからなのです。
紙巻きタバコから加熱式タバコに変えてから、歯や歯茎に痛みを感じた方は歯周病になっている場合があるためすぐに歯科医院で診察するようにしましょう。またインプラント治療などの際は、医師から少なくとも手術前2週間は禁煙することが必要なのですが、その際、加熱式タバコや電子タバコを含むすべてのタバコをやめるようにしましょう。
禁煙をするよう心がけよう
タバコがもたらす歯への影響はなかなかご自身で感じることはできませんが、確実にタバコの有害物質は口腔内の組織を壊し続けています。しかし禁煙をすることで口腔内の病気のリスクを下げるだけではなく、歯周病になるリスクも4割ほど減少します。さらに肺癌になってしまう危険性は非喫煙者の4.5倍ほどですが、禁煙することで危険性も減少していきます。このように禁煙は体全体の健康にもつながっているのです。
また、歯周病になった後、喫煙を続けている患者さんと禁煙した患者さんとでは、数年後の歯を失うリスクも大きく変わることも研究により分かっています。さらに、一緒に生活をしているご家族、そして友人、職場などでの受動喫煙や三次喫煙もなくなります。 さらに味覚も正常になって食事も美味しく感じられるようになり、食生活の改善にも繋がるため、楽しく健康的な生活を過ごすことができるのです。 しかしどうしても禁煙が我慢できないという方は、歯科医と相談してガムやパッチなどの禁煙治療をすることもできます。禁煙をすることによって、歯の健康を取り戻すのだけではなく身体の健康も取り戻すことができるため、快適な生活を送ることができるのです。