近年の歯科治療は、治療技術の向上や様々な症例をもとに研究を続けている事で、治療の選択肢が広がりました。そのため、以前は抜歯が必要な症例でも歯も残せる治療がおこなえるようになってきました。もしも重度の歯周病や虫歯、急な事故などで歯を失ってしまっても、治療によって歯を補うことが可能です。しかし治療がいくら進歩したとしても、ご自身の歯に勝るものはないのです。ですので、なるべく天然の歯は残すような治療方法を選択することが良いといえるのです。そうは言っても、症状によってはどうしてもその歯を残すことができず抜歯しなければいけないこともあります。これは医師が、抜歯をすることが最善の治療方法だと判断した時の選択肢なのです。では、もし歯を失ってしまった後はどのような選択肢があるのでしょうか。
歯を失ってしまった場合の治療方法
もしも歯を失ってしまった場合、人工歯によって補うことが可能です。治療方法としては、入れ歯治療、ブリッジ治療、インプラント治療があります。これらはそれぞれにメリット・デメリットがあるため、患者さんの症状や、ご要望などにおいてもどの治療方法が向いているのかが変わってきます。
入れ歯治療が向いている場合
歯がない部分が2本以上連続していたり、とびとびで歯がない場合は入れ歯治療が向いています。さらに奥歯がないような場合では、ブリッジ治療ができないことが多く、入れ歯治療かインプラント治療のみの治療になります。 基本的に入れ歯治療が可能な場合、インプラント治療も対応が可能な場合が多いのですが、患者さんが高齢の場合や、顎の骨が痩せてしまっている場合はインプラント治療ができないこともあり、その場合は骨造成手術をおこなうか、入れ歯治療になる場合があります。 入れ歯治療は保険が適応できるため、その場合費用が比較的安く治療ができます。また、手術の必要もないため治療期間も短くてすみます。しかし、顎の骨と結合していないため会話や食事の際に外れてしまうことがあります。さらに口の中の異物感があり、見た目も保険適応の入れ歯は金属が目立ってしまいます。食事の際も天然の歯の2割ほどでしか噛むことができないため、食事を楽しむことも難しくなります。
ブリッジ治療が向いている場合
ブリッジ治療は失った歯の前後の天然の歯を削り、その削った両隣の天然歯を支えにして、被せ物を装着する治療法なため、健康な歯でも治療のために削る必要があります。しかし、すでに虫歯などで前後の歯を削っているような場合は、ブリッジ治療が向いているといえます。また、インプラント治療が費用の面で難しい場合も選択肢としてブリッジ治療となることが多いです。ただし、ブリッジ治療は支えとなる前後の歯に負担が大きくかかってしまうため、前後の歯が虫歯になってしまっている場合は数年後に歯が割れてしまったり、また虫歯になってしまうことがあるため、その場合は再治療が必要になります。このリスクも理解した上での治療を受けていただくことをお勧めいたします。
インプラント治療が向いている場合
インプラント治療は、基本的にすべての場合において対応できます。しかし、重度の全身疾患や骨の量や高さが十分に足りていない場合、骨粗鬆症の場合はインプラント治療ができない場合がありますが、血圧や血糖コントロールなど、疾患に対する適切な処置が可能な場合、治療期間が長期になることはありますが、インプラント治療を受けることができます。 インプラント治療は、天然の健康な歯を削る必要がない、口の中の違和感がなく天然の歯と同じくらいの力で咀嚼できるといった入れ歯やブリッジ治療に対するメリットがあり、ご自身の他の歯に負担をかけずに健康を守るというメリットもあります。他の治療法と比べると、どうしても費用が高額になってしまいますが、インプラントの歯や、他の健康な歯の寿命を長くすることができるため、長期的に考えると、結果的に他の治療法に比べても決して高額ではないのです。
歯が抜けたまま放置してしまうとどうなる?
歯を失ってしまったまま、治療をおこなうことなく放置してしまうと様々な問題が生じてきます。
- 歯並びが悪くなる(不正咬合)ことにより、咬み合わせに異常がでてしまうことにより、咬み合わせの効率が低下してしまいます。
- 失った歯の部分に隙間があるため、隣の歯が倒れこんできたり、周りの歯が動いてしまい歯並びが悪くなってしまいます。
- 歯を失ったままにしてしまうことにより、失った部分の骨が痩せてしまいます。(骨吸収)
- 咬み合わせのバランスが悪くなることで、他の歯に強い負担がかかってしまいます。強い負担が長期間続くと、さらに不正咬合や咬み合わせの異常がでてしまいます。
歯が失ったまま放置すると、口腔内だけでなく体全体にも悪影響を及ぼしてしまいます。失った歯の本数が多いほど、悪影響も大きくなるのです。そのため歯を失った場合は、何らかの治療方法を選択することで、失った歯を補うことが望ましいといえるのです。