インプラント治療は、失ってしまった歯の機能や見た目の美しさを取り戻すことができます。そのため、天然の歯のようにキレイな歯で何でもしっかりと噛むことができることで、快適な毎日を過ごすことができます。しかし、インプラント治療は、治療が終わってもそれで終わりというわけではないのです。
毎日のご自身での正しいセルフケアや、歯科医院での定期的なメンテナンスがとても重要になります。これらを怠ってしまうと、インプラントの歯周病である「インプラント周囲炎」になってしまう危険性があるのです。インプラントは痛みを感じないため、初期の段階のインプラント周囲炎は自覚症状もないことから、気付くことが難しく、気付いたときには症状がかなり進行してしまっている場合が多いです。最悪の場合インプラント周囲炎によって、インプラント体を支えている歯槽骨が溶けてしまい、インプラントが脱落してしまう危険性もあるのです。インプラントを長く快適に使用して頂くためにも、治療後に気を付けなければならない注意点をご説明いたします。
インプラント治療後のアフターケア
ご自身でのセルフケア
インプラントの周囲は天然の歯と違い歯根膜がないため、歯茎への血流が少なく細菌に対する防御機能が弱いので、歯垢などの汚れが溜まりやすくなってしまいます。そのため、汚れが付着すると細菌が増殖しやすく、インプラント周囲炎が起こりやすいのです。そのため、ご自身での毎日の正しいセルフケアがインプラント周囲炎を予防するために重要になります。歯ブラシでのブラッシングだけではなく、歯間ブラシやデンタルフロス、タフトブラシなどの清掃器具を併用して、歯垢を除去することが大切です。
歯科医院での定期的なメンテナンス
インプラント治療後に、歯科医院での定期的なメンテナンスをおこなうことは、インプラントを長く快適に使用するためにとても重要です。メンテナンスでは、インプラントだけでなく、周辺の歯や歯茎などの粘膜に炎症やトラブルがないかをチェックし、日頃の歯磨きがしっかりとできているか、歯と歯茎の隙間の歯周ポケットが広がっていないか、上部構造に問題がないかなどを目視で確認します。目視では確認できない内部をチェックする際は、レントゲン撮影によって顎の骨やインプラント周辺の様子などを確認します。
また、インプラント治療の際に噛み合わせの調整をおこなっていたとしても、噛み合わせのバランスが崩れてしまっている場合もあるため、噛み合わせのチェックもおこないます。もしもバランスが崩れている場合は、インプラントを削って調整をおこなうこともあります。さらに歯科医院での歯のクリーニングは、ご自身での毎日のセルフケアだけでは取り除くことができない歯垢や歯石などの汚れを取り除くことができます。クリーニングでは、インプラントや他の歯に付いた歯垢や歯石を、スケーラーという器具を使って取り除くスケーリングや、歯科医師や歯科衛生士などが専用の器具を使用しておこなうPMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)によって、歯磨きでは落とすことができない歯垢や歯石、さらに細菌の集合体であるバイオフィルムもキレイに除去することができます。その他にも、歯の表面に付着した着色汚れを取ったり、歯科衛生士による正しい歯磨きの指導もおこないます。正しい歯磨きの仕方を身につけることで、毎日の歯磨きを適切におこなうことができるため、口腔内を清潔に保つことに繋がります。
歯科医院での定期的メンテナンスは、3ヶ月から半年に一度程度を目安にしておこないます。メンテナンスをするのとしないのでは、インプラントの寿命は大きく違ってくるため、必ずおこなうようにしましょう。
インプラント周囲炎は全身疾患や生活習慣によっても引き起こされる
糖尿病
糖尿病の場合、免疫力が低下してしまうため、術後の傷口の治癒やインプラントと骨の結合に悪影響を及ぼす危険性があり、インプラント周囲炎を引き起こしやすくなります。
喫煙
タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素は、血管を収縮させてしまったり血流を阻害してしまうため、栄養や酸素の供給を妨げることで術後の傷口の治癒や、インプラントと骨の結合を阻害します。さらに、ニコチンは免疫を働かせている白血球の作用を低下させるため、歯肉に炎症が起こりやすくなるだけでなく、唾液の分泌量を低下させるため、免疫細胞が少なくなり、インプラント周囲炎のリスクが高くなります。
インプラント周囲炎を予防するためにも、糖尿病の症状の改善や禁煙が重要です。インプラント治療の間は禁煙が必要になりますが、治療後もインプラント周囲炎を予防し、長く使用するために良い機会ですので、禁煙することをお勧めいたします。